日本の介護は西暦2000年以前と以降で大きく変わります。介護保険制度の施行です。それ以前は、医療保険や行政による「福祉の措置制度」でした。行政庁の職権で介護が必要かどうかを判断し、サービスの種類や提供機関を決定していたのです。利用申請に対して、今のように自分で好きなサービ者施設を選ぶことはできませんでした。
しかし、その代わりに国民の義務が加わりました。介護保険制度の第4条には「国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して、常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする。」と言います。それなら、どんなサービスがあるのか徹底的に、その義務に対してどんなサービスを選べるのか調べる権利があるのではないでしょうか。
まず、よく質問されるのが、40歳になると徴収される介護保険料を海外にいたため、一度も払ったことがないのですが、日本に帰ってから介護は受けられるのですか?というものですが、答えは「YES」です。ただ、在留期間3か月以上で、住民票があること、適用除外施設に入所していないことで、介護保険料を払い始めたばかりでも、条件を満たせば、外国人でも受けられるのです。
介護保険料は、住んでいる市町村ごとに違います。日本中で一番高いところは8,686円(奈良県天川村)、安いところは2,800円(鹿児島県三島村)。なんと3倍以上の差があるのです。都会だから高いとか田舎だから安いとかは関係なさそうです。ちなみに月額は全国平均で5,514円です。毎月払うお金だから気にもなりますね。
介護保険費用とはいくらなのか?
例えば、居宅サービスの代表的なもので「訪問介護」があります。その生活援助60分(掃除洗濯買物代行等サービス)は約223円。身体介護60分(ヘルパーが身体に触れて支援するサービス)は約394円。最近は10分程度の身体介護を一日複数回利用することも増えています。その場合は20分未満として約165円です。
もう一つ「通所介護」。通称「デイサービス」。これはよく混同されるデイケアとは違います。デイケアは「通所リハビリテーション」であり、前者より医療に近いサービスに相当します。前者のデイサービスは要介護度、施設の規模、利用する時間の長さによって料金が変わります。要介護度とは、要介護1から要介護5まで数字が大きくなるごとに状態が重く(支援が必要に)なります。例えば、要介護3の方で、二十人定員、3時間の通所介護を利用した場合、470円。同じ条件で、6時間利用した場合、761円。9時間の場合、898円です。
そして、訪問介護も、通所介護もそれらを週何回使うかはご自身の懐に相談するだけです。料金は2018.4月時点。さらに地域によって多少差があります。その他にかかる料金も事業所によって変わりますので、詳しくはケアマネジャーにご相談ください。
そうそう。そのケアマネジャーとはどういう存在なのか。
ご自身の、または、両親の介護のかなめ的存在となりますので、慎重に「選んで」ください。基本的には「ケアマネジャーは公正中立でなければならない」という見識でご相談対応しているのですが、やはり人間である以上、相性の良し悪しも含めて千差万別であることは仕方ないことです。ただ、もう一つ背景を知る手段として、ケアマネジャーが有しているその他の資格についても聞いておきましょう。いわゆるケアマネジャーになる前の職がなんであったのかということです。
例)医師、歯科医師、薬剤師、保健師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、義肢装具士、言語聴覚士、歯科衛生士、視能訓練士、柔道整復師、精神保健福祉士、栄養士、管理栄養士があります。
資産はいくらあればいいのか?
上記では居宅サービスの「訪問介護」「通所介護」を紹介しましたが、次に「施設」を紹介します。施設は大きく分けて、「特養」「老健」「グループホーム」「ショートステイ」「小規模多機能型居宅介護」等がありますが、最近メジャーになっている3つ「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」の料金を比べてみます。入居一時金で高いのは介護付の3000万円以上が主流になっているという点です。中には300万円以下やゼロ円というものもあるようですが、住宅型のゼロ〜15万円とか、サ高住のゼロ〜25万円程度に比べると概して高いということになります。ちなみにそれぞれの平均月額は介護付が20〜25万円が主流に対して、住宅型が10万円未満〜15万円程度、サ高住も10万円未満〜20万円程度と言ったところです。もちろん、住宅型もサ高住も30万円以上なんていうものもありますが、平均はこんなところでしょうか。
また、料金や場所以外の「施設選びのポイント」はどんな点か?アンケートTOP5。
5位 一人一人に合わせた生活支援サービス提供がどんなものか
4位 認知症ケアへの取り組みはどうか
3位 入居者の意見反映の機会や運営の仕組み
2位 24時間の医療体制や協力医療機関との連携
1位 栄養とバランスに配慮した食事の提供かどうか
これからの施設選びは必ずしも「終の住処探し」ではないと心得てください。その施設に入ることで「どんな生活(朝・昼・夕・夜)がイメージされるのか」「どんな同居者と共同生活が過ごせるのか」「そのまま終末期を迎えるのか」「元気になれる環境なのか」等。私が「ここだけは嫌だ」という施設がものすごく相性がいいという方もおられれば、私が「絶対ここはお勧め」というところが「全く嫌だった」ということもあります。施設選びは恋人選びなのかもしれません。それぞれの相性を多角的にみてから選んでください。
